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内定者フォローまとめ(基本から応用まで)

いまやほとんどの企業で行われている内定者フォロー。内定者が抱える不安を払拭し、社会人デビューに向けて意識を切り替える目的で行われています。効果としては内定辞退を軽減だけではありません。辞退を考えていない内定者にとっても入社に向けて自身の気持ちを整える機会になるため、採用活動において重要な施策と言えるでしょう。本コラムでは、内定者フォローの基本から具体的な方法までご紹介します。

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内定者フォローの必要性

就職協定が1996年をもって廃止されて以来、大手企業に牽引される形で新卒採用は早期化しています。そのため、内定を出してから入社までの期間が長くなり、内定者の決心が揺らいだり、気持ちに変化が起きたりと、内定辞退を生む要因の一つとなっています。

また、いわゆる「就職氷河期」が2005年にいったん終息し、有効求人倍率が一転して上昇する2006年からは学生優位の売り手市場が続いています。優秀な学生ほど複数の企業から内定を得るため、学生も取捨選択の決断を迫られることになります。

さらに、経団連が2021年春の入社から採用活動に関する指針廃止の意向を表明したことで、一層の早期化・長期化・通年化への懸念が広がっています。

内定、あるいは内々定から無事入社に至るまで、採用企業は内定者を繋ぎ止めるためのフォローがますます必要不可欠となってきました。

内定辞退の現状

2019年卒の内定辞退率の平均値は約46%。(内定辞退人数÷内定出し数)2018年卒とほぼ同数です。多少の上下率はありつつもこの状況は2020年卒も同様の傾向が続くと考えられ、内定辞退防止のための対策が引き続き必要です。
※就職みらい研究所(株式会社リクルートキャリア)『就職白書2019』より  

内定辞退人数÷内定出し数=76.6÷167.2で、2019年卒の内定辞退率は約46%。40%以下になる事態は何とか避けたいものです。

また、2019年卒採用を振り返って、内定辞退者が「かなり増えた」「やや増えた」という企業は、全体で合計40%以上。採用活動状況が「とても厳しい」「厳しい」と感じている企業は86%以上にもなります。
※株式会社ディスコ キャリタスリサーチ「2019年卒・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査」より  

2019年卒の内定辞退者は、全体で12.5%の企業が「かなり増えた」、27.8%の企業が「やや増えた」、38.3%の企業が「変わらない」と答えています。

 

 

内定辞退による企業側の損失

採用に要する費用は、入社予定者一人当たり平均約50万円と言われています。2019年卒の調査では、上場企業の平均が約54.3万円、非上場企業の平均が約53.2万円。ここ数年、金額は年々増える傾向にあります。
コスト面だけでなく、採用に携わるマンパワーも、企業にとっては看過できない問題です。2019年卒採用活動においては、今後の課題としてマンパワーが企業アンケートのトップに挙がっており、新卒採用に費やす時間や人数が「増えた」とする企業が「減った」を上回っています。
※就職みらい研究所(株式会社リクルートキャリア)『就職白書2019』より  

企業にとって2019年卒新卒採用における課題のトップは「採用に係るマンパワー」。

 

新卒採用活動に費やす総時間は、「減った」と答えた企業7.0%に対して、「増えた」は49.7%。
 
新卒採用活動に係る人数は、「減った」と答えた企業8.8%に対して、「増えた」は25.9%。

内定辞退ともなれば、再募集・再採用のため、費用もマンパワーもさらに投入しなければなりません。内定者一人はエントリー者数十人に相当する価値と言われており、その分を失うわけですから、損失は多大。事態を想定して費用の計上やマンパワーの充足を図る企業も出てきましたが、すべての企業が資金的にも人員的にも余裕がある訳ではないでしょう。できれば内定辞退を未然に防止し、新卒採用の損益は最小限に抑えたいもの。そのためにも、より効果的・効率的な「内定者フォロー」が、人事ご担当者にとっては命題となっています。

 

内定者フォローの重要性
内定者一人はエントリー者数十人と同じ価値があり、一人辞退すればその分を失います。追加採用となれば、必要数×数十人のエントリーを新たに集めたり、説明会や面接を繰り返さなければいけません。コスト的にも、労力的にも、企業にとって大きな負担となります。

 

 

内定辞退リスクが高まる時期

では、時期的にはいつ内定辞退リスクが高まるのでしょう?内定を得て就活を終えた学生が、その決定に対して「不安」を感じる時期を当社で調査したところ、以下の3つのピークが浮かび上がってきました。

この3つのピークこそが内定辞退の第一関門、第二関門、第三関門。逆に言えば、このピークにこそ、内定出しして入社させたい学生に対して、いかに魅力的な決断材料を用意できるか、内定者にどうアプローチするかが、内定辞退防止の決め手となります。

※株式会社ガイアックス 内定者フォローSNS「エアリーフレッシャーズ」調査

内定承諾後の辞退率をまとめた他社調査を見ても、辞退が発生する時期と、内定者が不安を感じるピーク時期はほぼ一致します。
この3つのピークに、不安を抱えている内定者にタイミングよくアプローチし、不安を解消することが肝心です。ただし、不安を増長させたり、企業に対する不信感を抱かせたりするアプローチは、かえって逆効果です。
内定辞退を防止したいあまりに、「オワハラ=就活追われハラスメント」(他社への就活終了を企業が強要したり、内定を出す条件として就活学生を長期的に拘束したりといった行為)になってしまうと、学生ばかりか、社会的信用も失いかねないので、要注意です。

 

内定辞退の原因

不安を感じているということは、ある意味、学生たちは答えを求めてもがいている状態とも言えます。それに対する的確な答えを用意することが、企業としての「内定辞退防止」の最も効果的なカギとなります。
以下は、内々定後、不安が解消されないと答えた学生に対して、「こうだったら不安が解消されたのにと思うことは何か」というアンケートに対する回答です。
※2019年卒マイナビ学生就職モニター調査より 内々定後の不安が解消されない学生のみを対象としたアンケートで、「もしこうだったら『この会社でいいのか』という不安は解消されたのに」と思うこと(複数回答)は、「不安は解消されないと思う」という回答を除けば、1位「その仕事を一生やっていけそうだと思える」21.0%、2位「不安なことについて入社予定先の人と話し合う」17.2%、3位「内々定者同士で交流がある」。
もしこうだったら…という答えの1位が、「その仕事を一生やっていけそうだと思える」こと。つまり、その企業の仕事が自分自身に合っているか、やる気になれるかという、「企業に対する不安」と「自分に対する不安」が同時に解消されることです。
2位が「不安なことについて入社予定先の人と話し合う」、3位が「内々定者同士で交流がある」。これから一緒に働く「先輩や上司、同期・同僚に対する不安」も解消したいと考えている学生が、数多く存在します。

 

内定辞退する学生の心理(コメント)

内定を得た学生は、なぜ不安になるのか、どのような心理・心境になるのかリアルな声を集めてみました。

◆「せっかく内定もらったのに、モチベが下がって、自分の選択に後悔…就活中のあの熱量は何だったんだろう?」

◆「昨年6月に第一志望の企業に内定をいただきました。過度な期待はせず、技術習得とお給料のためと納得していたはずなのに…会社の嫌な面を見てしまい、学生生活も残りわずかなこの時期に、内定ブルーです。技術職なのに研修がやけに短く、内容もいい加減。なのに、根性論的な課題ばかり与えられます」

◆「内定もらった途端にブルーになってる。目標持ってしっかり就活してきたし、仕事内容も希望通りなんだけど、ホントに、自分、やっていけるの?」

◆「内定先の不正のニュースばかり目にして、先見の明がなかったとガックリ…」

◆「就活のため、思いきって髪染めるのやめて、スーツ着て、エントリーシートにももっともらしいこと書いて、なんと1回の面接で内定!ホントにこれでいいのか…。他の内定者はどうなんだろう?」

以上は、口コミの数例ではありますが、それまでは「何とか就職したい!」と意欲的に就活してきた学生ほど、内定を得て安堵し、冷静になって改めて内定先企業や自分自身を見つめ直し、不安に陥るようです。結婚前の「マリッジブルー」になぞらえた、いわゆる「内定ブルー」に捉われる学生が多くなっています。
悩みや迷いの中身は、やはり「会社に対する不安」「自分に対する不安」「同期に対する不安」が中心です。

 

内定辞退防止のメソッド(理論)

内定者フォローのコツとしては、不安が高まる3つの時期に内定者イベントを実施することです。短時間であってもリアルな接点を2~3か月に一度持つことが重要です。時期としては内定出し後の6月、夏休み中の7~9月、入社直前の2~3月は押させておきたいところです。
定期的な接触を持つ効果は学術的にも示されています。マーケティングでしばしば用いられる、「ザイオンス効果(ザイアンス効果)」をご存じでしょうか。人は、同じ人や物に接する回数が増えるほど、好感度が増すという心理的効果を表します。つまり、不安を感じている学生も、「接触」を繰り返すことによって、その企業に対して次第に好感を抱くようになります。3つのピークを捉え、継続して内定者との接触機会を持つことは、心理学的にも非常に効果的と言えるでしょう。
※ザイオンス効果(単純接触効果とセブンスヒッツ理論に関する図) ザイオンス効果の測定では、3回目の接触で認知され、7回目の接触で購買、すなわち決定・決断を前向きな行動に移すとされており、好感度は接触回数に比例して上昇します。
さらに重要なのは、その接触の「内容」です。学生は、「企業に対する不安」「自分に対する不安」「同期に対する不安」を感じているのですから、その不安を解消する内容でなければなりません。
就職する、企業に属するということは、言い換えれば「チームで働く」ことです。チームに対する不安が解消されれば、学生の選択肢は決断・決定へとシフトします。「他人同士の集まりをチームに変える方法」として、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授は「心理的安全性」を提唱しています(http://www.ted-ja.com/2019/02/amy-edmondson-how-to-turn-group-of.html)。
さらに、Google のピープル アナリティクス チームが「効果的なチームとは何か」を検証するリサーチを行ないました。結果、「誰がチームのメンバーであるか」より「チームがどのように協力しているか」が真に重要であるという結論を得ています。なかでも、最も重要なファクターが「心理的安全性」であるとしています。

 心理的安全性とは
「このチームなら大丈夫だ」と感じられることを意味します。例えば、そのチームでリスクある行動をしたとしても、批判されたり、馬鹿にされたり、罰せられたりしないという確信が持てることです。心理的安全性の高いチームのメンバーは、不安なくリスクある行動を取ることができ、また、新たな提案をしたり、質問したり、自分の過ちを認めたりすることができます。

 

内定者が求めるフォロー内容

それでは、具体的にどのような接触を学生に対して行なえばよいのでしょうか。まずは、学生側の希望する内容を見てみましょう。

内定者フォローで希望する内容の1位「内定者懇親会」は、内々定者フォローや、内々定者研修を受けたい理由として挙げられている「内々定者同士の人間関係を深めたい」心理の反映。内定者フォローで希望する内容の2位に「勉強会・グループワーク研修会」が挙げられ、研修として受けたい内容としては1位「ビジネスマナー」、2位「仕事理解・会社理解」、3位「コミュニケーションスキル」、4位「ビジネスシミュレーション」となっている事から、学生が希望する「内定者懇親会」は必ずしも食事会や飲み会とは早計に断じられないことが伺えます。

 ※2019年卒マイナビ学生就職モニター調査より
希望する内定者フォローとして、2018年卒・2019年卒共に「内定者懇親会」がアンケート調査でトップに挙げられ、食事会や飲み会と捉える向きもありますが、「内々定者同士の人間関係を深めたい」の反映と捉えた方が良いでしょう。学生は、これから同じチームで働く同期・同僚の「心理的安全性」について確認したいのです。一緒に飲んだり、食べたりすることでコミュニケーションはできるでしょうが、仕事上の心理的安全性は確認し合えません。まず、同期同士のチームで協働する機会を用意することが必要です。そして、お互いにポジティブなフィードバックをし合い、自分の存在意義を感じたり、一緒に目的を果たしたり、成果を上げたりすることで、「このチームなら大丈夫だ」と確信できることが重要なのです。

 

内定辞退防止の具体的施策

「内定辞退防止」の最重要ポイントは、学生の「企業に対する不安」「自分に対する不安」「同期に対する不安」を解消すること。そして、好感度と信頼感を増し、決心・決断へと導くことです。

学生が不安を抱きやすい内定後の6月、夏休み中の7~9月、入社前の2・3月のピーク時に、不安を解消する以下のテーマで内定者フォローイベントを実施すると、「内定辞退防止」に効果を発揮します。御社の内定者フォロー対策とその策定に、ぜひお役立てください。

 

(出典・参考)
・就職白書2019(リクルートキャリア)https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2019/190225-01/
・19年卒内定動向調査/20卒採用活動予定調査(キャリタスリサーチ 株式会社ディスコ)https://www.disc.co.jp/press_release/6451/
・新卒採用サポネット – 新卒採用の予算について(マイナビ)https://saponet.mynavi.jp/guide/process/part-1/
・みん就(みんなの就職活動日記)- 就活・新卒採用のクチコミサイトhttps://www.nikki.ne.jp/
・就職 – 5ちゃんねる掲示板 https://www.5ch.net/recruit
・Google re:Work – ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/
・2019年卒マイナビ学生就職モニター調査(7月の活動状況)https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2018/08/monitor_2019_5.pdf
・株式会社ガイアックス 内定者フォローSNS「エアリーフレッシャーズ」調査(コラム)https://fresher.jp/column.html

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