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チームビルディングまとめ(基礎知識から実践まで)

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チームビルディングとは

「チームビルディング」とは、一言でいえば「メンバー同士の関係性を重視したチームづくり」です。チームのメンバーがお互いの信頼関係を築く事で、個々の力を発揮し、それぞれ連携しながら、同じゴールに向かって目標達成を目指します。
わかりやすい例で言えば、ラグビーワールドカップ2015で日本代表がW杯2回優勝の世界ランク3位・南アフリカ代表に勝利し、「歴史的快挙」と呼ばれたのは記憶に新しい事でしょう。この時、エディ・ジョーンズヘッドコーチが用いた「Japan way」というチームビルディングが脚光を浴び、日本のビジネス界でも非常に注目を集めました。
組織で日々の業務を推進したり、一定のプロジェクトを完遂するには、複数のメンバーによるチームの組成が不可欠です。効果的なチームづくりはより強く良好な組織の礎ともなり、人事労務においても、この「チームビルディング」を重視する企業が増えています。

 

内定辞退の現状ビジネスにおけるチームビルディング

2013年に一般社団法人 日本経営協会が会員企業の正規社職員を対象に、組織・チームに関する調査を行ないました。「現在、組織やチームが抱えている問題はあるか」という質問に対して、半数以上の60%強が何らかの問題を抱えていると回答しています。
「仕事に対する個人のモチベーションが低下した」「組織やチームに対する不満が増大した」「お互いの仕事に対して無関心になった」「組織やチームのコミュニケーションが悪化した」など、仕事の成果へも影響を及ぼしかねない回答が上位にあり、「個々人の組織やチームへの信頼感や愛着心が低下した」も10%強ながら上位回答の部類に入っています。

では、「チームワークをよりよい状態に保つには何が必要か」という問いには、以下の回答が得られています。

※一般社団法人 日本経営協会「組織・チームにおけるメンバーのあり方と行動についての調査報告書」より 「組織・チーム内の人の間に相互信頼関係があること」が約70%でトップ。「安心して議論したり意見を出したりできること」「組織・チームの全員が情報共有に前向きであること」が続き、チーム内のメンバーの関係性やコミュニケーションを重視し、必要性を感じている事が伺えます。
かつてのビジネス界では、カリスマトップやスーパーヒーローのようなリーダーがもてはやされた時代もありました。しかしながら、「VUCA(ブーカ)ワールド」と呼ばれる現代社会では、技術革新に伴いビジネスは高速化、時代の変化に合わせて顧客ニーズも多様化し、グローバル化による範囲拡大と共に競争はさらに激化…と、どんなに強力なトップやリーダーであっても一人では対応しきれない状況になっています。
そこで、組織内のチームメンバーが力を合わせる事で目標達成する「チームビルディング」が、現代ビジネスに欠かせない要素として求められているのです。
VUCAワールドとは
Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字4文字を取った造語で、予測困難な社会経済状況にある現代認識を表します。もとは複雑な国際情勢を示す軍事用語でした。2019年1月にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(通称・ダボス会議)でも幾度となく用いられ、人と組織の関係性においても今最も注目されるキーワードです。

 

リーダーシップとチームビルディング

ここで、改めて、トップ(経営陣)、リーダー(管理職)、メンバー(社員・職員・店員・スタッフ等々)の立ち位置と役割を再確認しておきましょう。
「中間管理職」などという言葉もありますが、リーダーはまさに組織の中間に位置し、トップとメンバーをブリッジする重要なポジションです。
上図のように、組織の目標や戦略を、現場で働くメンバーの力で実現化するには、現場のチームでリーダーシップを発揮し、業務推進を行なうリーダーの存在はなくてはなりません。
このリーダーシップに欠かせない能力として、「コーチング」「ファシリテーション」などとともに、「チームビルディング」があります。
コーチングとは
対話を通して、メンバーが目標達成するプロセスを支援する事。
ファシリテーションとは
会議やプロジェクトがスムーズに進むようメンバーの意見を引き出したり、合意に向けて論点を整理したり、また成果が上がるようメンバーを支援する事。
長きにわたる景気低迷で、目先の売り上げや利益を追求する余り、多くの企業が成果主義に走る状況もありました。しかし、従業員同士の達成競争や成果に対する減点評価はかえってメンバーの意欲を削ぎ、結果、ストレス過多や早期退職を招いて、人材の流動化にも繋がってしまいました。
現代のマネジメントでは、こうした反省も踏まえ、「個の競争」から「チームの共創」へとシフトしており、不況下でも発展し続けている企業の多くは「チームビルディング」を実践しています。そこには必ずと言っていいほど、「チームビルディング」の仕組みを理解し、運用・遂行能力のあるリーダー、そして健全な関係性を維持しているチームの存在があります。
もちろん、「チームビルディング」は一夜にしてできるものではありません。発展段階のモデルとして、アメリカの心理学者、ブルース・タックマン(Bruce Wayne Tuckman)が提唱した「タックマンモデル」がよく知られています。

1. forming(形成・結成) :メンバーが集まり、チームのあり方や目標などを模索する最初の段階。
2. storming(混乱・激動):チームのあり方や目標などを巡り、意見の対立や混乱などが生じる段階。
3. norming(統一・規範形成):チームとしての見解が共有されて関係性が安定する段階。
               役割分担や協調が生まれ、行動様式の規範(norm)が確立。
4. sperforming(機能・成就):チームが成熟して充分に機能し、成果を挙げる事ができる段階。

 

チームビルディングの成功例

「チームビルディング」に取り組んだ最も有名な事例と言えば、Googleの「re:Work」でしょう。Googleの研究者で構成されるピープルアナリティクスチームは、効果的なチームの特徴を明らかにするためのリサーチを実施しました。まず試みたのが、「チームとは何か」を明確にする事です。
■「ワークグループ」と「チーム」の区別
ワークグループ: 相互依存性が最小限という特徴があり、組織または管理上の階層関係に基づいています。ワークグループのメンバーは、情報交換のために定期的に集まる場合があります。
チーム: メンバーは相互に強く依存しながら、特定のプロジェクトを遂行するために、作業内容を計画し、問題を解決し、意思決定を下し、進捗状況を確認します。チームのメンバーは、作業を行うために互いを必要とします。(※Google「re:Work」より抜粋)
さらに、Googleのリサーチチームは世界中から集めた調査情報とデータを分析した上で、効果的なチームに固有の力学を突き止めました。そして、チームの効果に影響する因子を重要な順に並べると、以下のようになるという結論を得ています。
① サイコロジカル・セーフティー(心理的安全性) チームメンバーがリスクを取る事を安全だと感じ、お互いに対して弱い部分もさらけ出す事ができる。
② 相互信頼 チームメンバーが仕事を高いクオリティで時間内に仕上げてくれると感じている。
③ 構造と明確さ チームの役割、計画、目標が明確になっている。
④ 仕事の意味 チームメンバーは仕事が自分にとって意味があると感じている。
⑤ インパクト チームメンバーは自分の仕事について、意義があり、良い変化を生むものだと思っている。

 

日本でも、数多くの企業が「チームビルディング」を導入しています。

・サイボウズ株式会社の例
ITソフトウェア企業のサイボウズ株式会社は、「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念を伝えるため、2012年に自社メディア「サイボウズ式」(https://cybozushiki.cybozu.co.jp/)を立ち上げ、「新しい価値を生み出すチームの情報」を発信し続けています。注目したいのは、この「サイボウズ式」編集部の働き方自体が、グループウェア等の活用により、リモートワークでも「チームビルディング」が可能な事を実証している点です。

・クックパッド株式会社の例
海外会員も含め約5000万人のユーザーを有するレシピサイト運営会社、クックパッド株式会社。エンジニアが100人を超えた時点から、チームの力を最大限に引き出すため、積極的に「チームビルディング」に取り組んできました。若手育成のため、新入社員研修にも取り入れ、「ものづくりが好きなメンバーをつくる」という目的を果たしています。

・株式会社丸井グループの例
IT系の業種ばかりではありません。クレジットショッピングの先駆者、株式会社丸井グループも「チームビルディング」に前向きな企業として知られます。グループ内社員向けイベントとして毎年大規模な「インクルージョンフェス」を開催していますが、そのイベントの一つにも「チームビルディング」を取り入れています。

・バリューマネジメント株式会社の例
日本の文化資産である歴史的建造物、その利活用を推進するバリューマネジメント株式会社も、「チームビルディング」を積極導入する事で、近頃、注目されている企業の一つです。2018年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)中規模部門(従業員数100人以上、999人以下)では、名立たる企業を抑え第2位に選ばれています。

 

チームビルディングの問題点

多くの組織が「チームビルディング」の導入に成功していますが、物事には必ず反面があるように、やり方を一歩間違えれば失敗に繋がります。そして、「チームビルディング」の失敗は事業の失敗にも結び付く可能性がありますから、きちんとノウハウを踏まえ、安易な導入は避けたいものです。
「チームビルディング」の導入に際し、つまずきやすい事象、必ずぶつかる障壁とも言うべき事柄をここに列挙しておきます。

目標やミッションの理解・共有ができていない
これは、「チームビルディング」を行う際、まずあってはならない致命的な事態です。共有の目標なしに「チームビルディング」の形成はあり得ません。

“暗黙の了解”による認識や理解の相違が生じる
例えば、所属部署の異なるメンバーがチームを組むと、各部署の慣習や通例などの相違が「チームビルディング」の障壁となる場合があります。これを避けるには、“暗黙の了解”は作らず、放置しない事。予めマニュアルや仕様書を作成しておき、提案書や企画書は必ず共有する事が重要です。

思考・感覚・行動の相違が人格否定に繋がってしまう
「ムラ社会」と揶揄される日本人の集団は、議論が苦手とよく言われますが、意見の相違が「あの人はああいう性格だから」という人格批判に繋がりやすいのも事実です。「チームビルディング」における意見の対立は必ず生じるものですが、人格批判や人格否定は活発な意見交換にブレーキをかけ、最悪の場合はチームの崩壊を招いてしまいます。タブーは予め明確に設定しておきましょう。

コミュニケーションツール選択の誤りが情報共有を阻む
電話やメールは1対1のコミュニケーションには便利なツールですが、チームで用いる場合は、下手をすると限られたメンバーにしか伝わらず、情報共有には不向きです。現代には多種多様なコミュニケーションツールが存在しますが、最適なツール選びは最適なビジネスの武器選びと同様。目的に合ったコミュニケーションツールの選定が必要です。

ここで、一つの寓話をご紹介しましょう。20世紀の知の巨人、ピーター・F・ドラッカーが『マネジメント』などの自著の中でも取り上げている、あの有名な「石切り場の職人」の話です。ご存じの方も多い事でしょう。
3人の石切り工が「何をしているのか」と尋ねられ、こう答えます。
第一の男は、「これで暮らしを立てているのさ」。
第二の男は、つちで打つ手を休めず、「国中でいちばん上手な石切りの仕事をしているのさ」。
第三の男は、その目を輝かせ夢見心地で空を見あげながら、「大寺院をつくっているのさ」。
この話には後日談があり、数十年後、再び同じ石切り場を訪ねると…
第一の男は、どこにいるかもわからず、所在不明でした。
第二の男は、その石切り場の立派な親方になっていました。
第三の男は、当地で評判の高い建築家になっていました。
経営者に向いているのは第三の男というエピソードとして知られますが、チームの目標がいかにメンバーにとって重要か、能力を引き出し、やる気を持って働くために必要かという逸話とも受け取れます。

 

企業のチームビルディング導入方法

では、実際に「チームビルディング」を職場へ導入するには、どのような方法があるのでしょう?

■対話
初めてチームを組む時は、お互いを知らない同士がメンバーになる場合も多いでしょう。チームが信頼関係を築くには、まずお互いを知る事が大切で、そのために必要なのは「対話」です。そして、対話を行なう際には、必ず押さえておきたいポイントとして「自己開示」と「ビジョン」があります。
「自己開示」とは、自分の「強み」と「弱み」を知り、それをさらけ出してお互いに知る事です。チームを組むのは全員が同じ事をするためではなく、得意な人が得意な事を行ない、苦手な事はカバーし合う事で、効率的に目標達成するためだからです。リーダーとメンバー1対1による対話を、職場で定期的に実施している企業もあります。また、ジェスチャーゲームや伝言ゲーム、仮想プレゼンといった、コミュニケーション型のグループワークを取り入れている企業もあります。
「ビジョン」は、言うまでもなくチーム共有の目標です。そもそも、トップが示す「ビジョン」が社長と取締役では見解が異なるなどといった状況では、チームは共有の目標を見失います。そこで、近頃では、経営陣の「チームビルディング」を実施する企業もあります。

■アクティビティ
チームでボードゲームを行なうなどのインドア型アクティビティと、スポーツや山登りといったアウトドア型のアクティビティがあります。同一のゴールや目標に向かって共有の体験をする事で、チームの関係は強固になります。また、体験は五感を通して記憶に定着しやすいので、その後の職場でも効果を発揮し続ける事が期待できます。
近年、公共のプロジェクトなどで異業種同士がタッグを組み、組織の枠を超えて「チームビルディング」を行なう事例も増えてきました。ヤフー株式会社、株式会社インテリジェンス、日本郵便株式会社、アサヒグループホールディングス株式会社、株式会社電通北海道、北海道の美瑛町職員による『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』(2015年・日経BP社刊)も、その一例と言えるでしょう。

■研修
日々の業務を遂行しながらの「チームビルディング」は、困難を伴います。特にプレイングマネジャーが増えた現代では、リーダーの負担とストレスが高まります。リーダーの挫折はチームの崩壊、ひいては事業の失敗にも繋がりかねません。
そこで、「チームビルディング」の最も効率的な方法として、「研修」を重視する企業が増えてきました。上記の「対話」や「アクティビティ」を取り入れる事もできますし、自社に合ったチームビルディング研修を状況に応じて施策・実行できます。
コンサルティング会社・日本コンサルティンググループの新入社員を対象としたアンケート調査でも、就職先での働きがいとして大切にしたいもののトップに「教育制度が整っており、学びを仕事に活かせる場がある」が挙げられています。

※株式会社日本コンサルティンググループ「新入社員アンケート調査結果」(2018年)より 全体で見ると、「教育制度が整っており、学びを仕事に活かせる場がある」と「自分の仕事が組織に貢献している実感がある」が同列で、26.4%を占めています。

 

チームビルディング研修のポイント

少し古いデータになりますが、人事ポータル会社・HRプロ株式会社の2011年調査によると、「貴社ではチームビルディングを意識した取り組みを会社として何かされていますか」という質問に対して、「チームビルディング研修」を行っている多くの企業がポジション別に実施している事がわかります。
※HRプロ株式会社 「チームビルディングに関するアンケート調査」結果報告より 「チームビルディング研修(新入社員)」「チームビルディング研修(中堅社員)」「チームビルディング研修(管理職)」「チームビルディング研修(経営者)」を合わせると、全体の47%が「チームビルディング研修」を実施している事がわかります。しかしながら、8割以上の企業が「チームビルディング」の必要性を感じながらも、行なっている事は「特にない」35.5%というのも気になるところです。
実際に「チームビルディング研修」を効果的に行なうため、押さえておきたいポイントを列挙しておきましょう。
 ◆ 目標の共有:目標・目的が明確で、目標達成のためチームが方法を模索できる事。
 ◆ チームワーク:協力する必要がある、または協力するタイミングがある事。
 ◆ 役割分担:各自の「強み」を活かし、「弱み」をお互いにカバーできる事。
 ◆ 情報共有:情報を正しく伝達・把握・理解でき、チーム全員が情報共有できる事。
 ◆ 心理的安全性:進捗を管理できる節目があり、達成感を得る事で「心理的安全性」が形成される事。

 

チームビルディングを成功へ導くには

優秀なメンバーが揃っているのに、なかなか仕事が効率的に進まない。…そんな時は、一度、組織内のチームを見直してみる事が必要です。リーダー一人が奮闘している状況ではないか?チーム内のコミュニケーションや信頼関係は良好か?メンバーはそれぞれ自分の「強み」「弱み」を心得ていて、やる気を持って仕事に向き合っているか?共有の目標は明確か?…etc.
「チームビルディング」を行なうためだけでなく、組織内チームの状況を把握するためにも、「研修」は有効です。楽しみながらチームワークが身につくグループワークの導入を、検討されてはいかがでしょう?
最後に、良いチームをつくるための7つのキーワードを挙げておきます。
  「開示」「相互信頼」「目標共有」「協働意欲」「完遂」「挑戦」「相互成長」
「チームビルディング」の成功は、事業の成功を導きます。不確実で複雑化した今日のビジネス社会で進展を遂げるため、「チームビルディング」は頼もしい組織の力となるはずです。

 

(出典・参考)
・一般社団法人 日本経営協会「組織・チームにおけるメンバーのあり方と行動についての調査報告書」
 https://www.noma.or.jp/Portals/0/999_noma/pdf/result201304.pdf
・日本の人事部  https://jinjibu.jp/
・東洋経済ONLINE  https://toyokeizai.net/
・Google re:Work  https://rework.withgoogle.com/jp/
・クックパッド株式会社  https://info.cookpad.com/
・株式会社丸井グループ  http://www.0101maruigroup.co.jp/
・バリューマネジメント株式会社  https://www.vmc.co.jp/
・株式会社日本コンサルティンググループ「新入社員アンケート調査結果」(2018年)
 https://www.niccon.co.jp/wp-content/uploads/2018/08/20180608shinnyuusyain_report.pdf
・HRプロ株式会社 「チームビルディングに関するアンケート調査」 https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=24

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